住宅着工統計の読み方 — 供給の勢いと需要のバランス
公開: 2026-07-04 / 更新: 2026-07-25(コトミラボ 編集)
「着工新設住宅戸数」は、その年に建て始められた住宅の数です。建築主が 工事前に提出する届出(建築工事届)にもとづく国の建築着工統計から作られる 供給側の指標で、当サイトでは市区町村別の値を掲載しています。
まず全国の文脈 — 190万戸の時代から80万戸の時代へ
新設住宅着工は高度成長期の1970年代前半に年間約190万戸でピークをつけ、 その後は人口・世帯の伸びの鈍化とともに減り、近年はおおむね年間80万戸前後の 水準です。一方で総務省の住宅・土地統計調査(2023年)では空き家が約900万戸・ 空き家率13.8%と過去最高を更新しています。「戸(こ)」は住宅を数える単位で、 900万戸は「きゅうひゃくまんこ」と読みます。おおよそ東京都の総世帯数 (約700万世帯)を上回る数の住宅が空いている、という規模感です。全国レベルでは「住宅の総数は すでに世帯数を上回っているのに、新築は毎年積み上がる」構図であり、 だからこそどこに建っているか(市区町村単位の着工)を見る意味があります。 着工が特定の地域に集中する一方で、ほとんど新築が建たない地域が広がっているのが 実態だからです。
内訳 — 持家・貸家・分譲で意味が違う
着工統計は利用関係別に大きく持家(自分で住むための注文住宅)、 貸家(賃貸アパート・マンション)、分譲住宅 (分譲マンション・建売戸建て)に分かれます。同じ「着工1,000戸」でも、 注文住宅中心なら実需の定着、貸家中心なら賃貸供給の増加(相続税対策の アパート建設が押し上げる局面もあります)、分譲マンション中心なら デベロッパーの需要予測、と読み筋が変わります。当サイトの市区町村別の値は 合計値のため質的な内訳までは表しませんが、値が大きく動いたときに 「何が建ったのか」を調べる手がかりにしてください。
需要とセットで読む — 4象限
読み方の軸はシンプルで、需要(人口流入)と供給(着工)のバランスです。
- 転入超過 × 着工多: 需要に供給が応えている活発な市場。新築の選択肢が 多く、既存物件は新築との競争にさらされやすい。
- 転入超過 × 着工少: 需要に対して供給が絞られており、 既存物件の需給が引き締まりやすい構図。都心部や、開発余地の少ない 成熟した住宅地で見られます。
- 転出超過 × 着工多: 供給過多に向かうリスクに注意が必要な組み合わせ。 貸家系の着工が多い場合は特に、完成後の空室動向が論点になります。
- 転出超過 × 着工少: 市場の新陳代謝が細り、取引データ自体が 少なくなりがち。相場指標も欠測・振れが増えます。
このバランスは各市区町村ページで、社会増減・着工戸数・将来人口指数を 並べて確認できます。
読み方の注意点
- 大規模プロジェクトで跳ねる。タワーマンション1棟で数百〜千戸単位が 一度に計上されるため、単年の急増は再開発の竣工サイクルであることが多いです。 推移で見てください。
- 制度変更の前後も振れる。省エネ基準や建築基準の改正、 消費税率引き上げなどの前には駆け込み着工が増え、直後に反動減が出るのが 定番のパターンです。単年の増減を実需の変化と即断しないのが無難です。
- 着工=完成ではない。実際に市場へ出るのは工期のぶん後で、 戸建てで数か月、大型マンションでは1〜2年かかります。着工の山は 「1〜2年後の供給の山」の予告と読むのが正確です。
ランキングで見る
全国の水準は住宅着工が多い市区町村ランキングで 一覧できます。需要側の転入超過ランキングと 見比べると、上の4象限のどこに近いかの見当がつきます。転入超過の定義や読み方は こちらの解説をどうぞ。